2006年02月25日

スタジオジブリの好奇心『熱風』2月号 特集:庶民から市民へ?

このところ毎号紹介しているスタジオジブリの小冊子『熱風』。
2006年2月号の特集は「庶民から市民へ?」。

今回の特集の文章は4本。
  1. 森 達也氏(映画監督・ドキュメンタリー作家)の「いま、煙草を吸うということは。」
  2. 武田 徹氏(ジャーナリスト)の「個人情報の正しい保護とはいったいなんだろう。」
  3. 天野 祐吉氏(コラムニスト)の「届く言葉は庶民の言葉」
  4. 橋本 治氏(作家)の「この際だから言うけど『市民』てなに?」

特に森氏の文は、「市民の自己責任」に潜む二項対立の構図を明らかにし、ヒトラーの「わが闘争」を引いて、単純な二元論への警鐘を鳴らす。「いま、煙草をすうということは。」というタイトルから、こうした話に持っていく文章力と内容に唸った。

なお、今回の特集企画趣旨について、同氏の文章の中で紹介されていた。

今、世間では「個々人の意識の高さ」が求められはじめています。それは、「庶民」という言葉が自分たちのものだと確信できていた時代にはなかったことでした。例えばインフォームド・コンセントや401kなどは賢くなり自分自身で責任を持つことを個人に要求しています。


市民権を獲得し、個人や個性が認められ、教育レベルが上がった総中流の果ては、「個人ではまかないきれないことまで荷を負わされている社会」なのでしょうか。今は「この日本社会の中で生きていくことに個人がそれぞれ責任を持ちなさい」=「市民」という時代への転換期にあるのかもしれません。それは私たちが意識しないまま、いつもまにか主流になるかもしれません。


そこで、この流れは、どういうことなのか今一度、さまざまな方々に文章を寄せていただくなかで考えてみたいという特集です。


ジブリの鈴木敏夫社長(プロデューサー)がインタビュー「世界一早い『ゲド戦記』」で、「希薄になってしまった『現実感』」、「日本人全体が陥っているかも知れない当事者意識の欠如」と言っていることとも符合する趣旨だ。いい時期に組まれたいい特集だと思う。


特集以外では、吉永 小百合氏が寄稿した「男鹿和雄さんの絵と出逢って」には、吉永氏の原爆詩朗読と男鹿氏の絵の幸せな出会いが書かれており、好感を持った。

<参考>
男鹿和雄画集
男鹿 和雄
4198605262
第二楽章
吉永小百合
B00005GXIF



大西 健丞氏の連載「鞆の浦のまちづくり NGO、常在戦場…日本編」は最終回。「地中海」にみる「圏」の発想と、平清盛の瀬戸内海を重視した構想を結びつけるところは、なるほどと思わされた。


最後に、「熱風」の購読方法などのリンクを記して終わる。
ジブリ出版部のページ
『熱風』今月号のご案内
ジブリの小冊子「熱風」の定期購読始まる YOMIURI ONLINE
54ページ分の好奇心 「熱風」編集長に聞く YOMIURI ONLINE
54ページ分の好奇心 「熱風」編集長に聞く(続き) YOMIURI ONLINE
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