2006年04月03日

【書評】ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる5

【評価】グーグルという断面からWebを斬り抜いた快刀乱麻


【概要】
著者は、次の十年の三大潮流は「インターネット」「チープ革命」「オープンソース」であると言う。そして、これを体現している会社「グーグル」を通じてウェブの進化というものを論じている。
そのポイントは、例えば以下のようなものである。
  • グーグルが「世界中の情報を整理し尽くす」というビジョンに、いかに本気で取り組んでいるか。
  • コンピュータ・システムをインターネットの「こちら側」ではなく、「あちら側」に置くという転換。
  • オープンソースによって、これまでの延長からはとても考えられないほどの低コストを実現したこと。
  • インターネットによって初めて可能になったロングテールから収益を得るビジネスモデル。
  • グーグルには単なる広告収益に止まらず、「富の再分配」という社会モデルまで埋め込まれていることについて。
  • これまでのどの企業とも異なる社内組織マネジメント。
  • 既存のネット企業とは異なり、社会に変革をもたらすテクノロジー会社であることについて。

【コメント】
本書は、ビジネスモデルを解き明かし、さらに社会のあり方・パラダイムシフトまで論じている点で、最近流行りの他のグーグル本とは一線を画す。
「ビジョン」「システム構築の思想」「それを可能にした技術革新」「コスト競争力」「イノベーションを奨励するために作り上げているワーキング・カルチャー」など、ビジネスパーソンが知りたいポイントが、明確に述べられている。

情報自身が淘汰を起こすという民主主義が、「プロフェッショナルとは何か」ということを問いかける。専門家と言われる人が、占有した情報と権威で影響力を持った時代は終わり、価値ある情報を発信し続けなければ競争に負ける。
羽生善治氏の「決断力」でも【インターネット=高速道路】ということが述べられていた。著者もこのことを引いているが、一定の情報は誰でも入手できる中で、いかに優位性を発揮するかというパラダイムになったことを理解させられる。


第5章でオープンソース現象「マス・コラボレーション」の事例として、途上国向けコレラ対策の課題を、見ず知らずの関連プロフェッショナルたちがネット上で短時間で解決してしまったことが紹介されている。そして以下の村山尚武氏のブログの内容を引いている。
創造の結果だけでなく過程を共有することによって参加者が互いに触発し合い、これまでに無かったもの、素晴らしいものを作ることができるのだ。それはまた、無数の凡人が互いに思考を共有し、足りない部分を補い、アイディアの連鎖反応を起こすことにより、より大きなインパクトを(大げさに言えば)文明に与えることを可能にするのである
「ネットワーク組織にはファシリテーションが求められる」とはファシリテーションのテキストによく登場する主張だが、本当のネットワーク上ではこうした創造が促進されるのだと本質的共通点を感じた。


日本の場合、特にエスタブリッシュメント層には、インターネットの「悪」の部分を強調しようとする傾向が強いと言う。著者はこの点に否定的だが、私は理解できる面もある。グーグルがあらゆる情報を持ったとき、彼らは「テクノロジー(コンピュータ)によって扱いプライバシーは侵害しない」と言うかもしれない。しかし、それを保証するものは何もない。
例えば銀行と同様に、高い倫理観と信用が求められる。このレベルの、インフラとしての「信用」をどう構築するかが問われるだろう。


グーグルを切り口にしているものの、ウェブの状況について比較的網羅的に述べられていると思う。おススメの一冊だ。
この本、最初は気になったものの手にとっていなかったのだが、のブログを読んで重大さに気づき、購入したものだ。こんさーる日記[2006]のoratakiさんに感謝したい。
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この記事へのコメント
1. Posted by orataki   2006年04月11日 06:48
こんにちは!oratakiです。
ご紹介いただきましてありがとうございます。この本と国家の品格は診断士の間でも好評でITに疎い方も読まれている良書といえるでしょう。
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