2006年06月26日

スタジオジブリの好奇心『熱風』5月号 特集:「考えること」の面白さと難しさ

スタジオジブリの小冊子『熱風』。
2006年5月号の特集は「考えること」の面白さと難しさ

今回の特集の文章は4本。
  1. 中沢 新一氏(人類学者)の「難しいことを考える(じゃなくて)考えることは難しい」
  2. 茂木 健一郎氏(脳科学者)の「時には世界から切り離されてまどろむために」
  3. 藤原 和博氏(和田中学校 校長)の「『思考停止』のポーズボタンを誰が解除するか」
  4. 松家 仁之氏(『考える人』編集長)の「考えないのはカンタンだ」
茂木氏はNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」でキャスターを務めているのでご存知の方も多いだろう。
「身体性」を取り戻すということがよく言われる中で、脳科学者らしい彼の主張は以下のパラグラフに現れている。
 君、そんな考え方は抽象的だよ、身体を取り戻したまえと批判するのは案外簡単である。人間が抽象的思考に夢中になって、しばしば新体制を忘れてしまいがちだということがたとえ事実だとしても、そのような手にとることも見ることもできないイデーがなぜリアリティを持ってしまうのかという問題は残る。

リクルート社から都内では義務教育初の民間校長に転じた藤原氏の主張は、もっと現代的・現実的かもしれない。
 私は、一つのことを巡って関係性のある物事をイメージし発想をつなげていく、こうしたチカラを「情報編集力」と名付けている。頭の柔らかさといってもいい。受験に使われる「情報処理力」(正解を記憶して瞬時にパターン認識し処理できるチカラ)とは別種のものだ。
 私は、成熟社会を迎えた日本では、成長社会の悪弊とも言えるパターン認識はむしろ邪魔になると考えている。
 世界を自分の頭でとらえ直し、みずからの人生観で生きるためには、前述したように、その事象とつながっている新しい関係性に気づくチカラ、すなわち「情報編集力」をつけることが肝要だ。
(参考)
藤原氏は、2006年6月26日(月)の日本経済新聞5面「インタビュー領空侵犯」に登場し、団塊世代は日本の社会が置き去りにしたり、壊したりしてきた農林漁業と地域コミュニティーを再生紙、日本型の成熟社会を切り開く先導役として貢献する美しい第二の人生モデルを示してほしいと述べている。

松家氏の主張は、伊丹十三氏の「日本世間噺大系」にまつわるエピソードを中心に論が展開されているのだが、コンサルタントとして耳を傾けるべき内容だ。
「考える」というのは、徒手空拳で物事に対面し、そこから何かを引き出すことのできる力なのだと思います。事前の準備や情報が木っ端みじんになっても、それでもなお、物事に対応ができる力を、私たちは「考える力」と呼ぶのではないでしょうか。あるいは、事前の準備や情報にしがみついていては「考えない」状態と同じである、と言い換えてみてもいい。

ものを考えることを仕事にしている人は是非読んでみることを勧めたい特集だった。


特集外で面白かったのは末吉 里花氏(レポーター)の短期集中連載「子どもたちの祈り」の第2回、リビア。

13歳の少年セラージュとの出会い、そして彼がなし、そしてしてくれた「祈り」。「サハラの星空に、皆に会えたことを感謝している」という気持ちになった末吉氏と、彼女に「レイラ」という名前を与えた現地のコーディネーター兼通訳。

読んでいて落ち着く文章だ。


最後に、「熱風」の購読方法などのリンクを記して終わる。
ジブリ出版部のページ
『熱風』今月号のご案内
ジブリの小冊子「熱風」の定期購読始まる YOMIURI ONLINE
54ページ分の好奇心 「熱風」編集長に聞く YOMIURI ONLINE
54ページ分の好奇心 「熱風」編集長に聞く(続き) YOMIURI ONLINE
トラックバックURL
この記事にコメントする
名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
BLOGカンパニー
BESTブログランキング
週刊ブログ王
ブログランキングくつろぐ
人気blogランキング
みんなのプロフィールSP
みんなのプロフィールSP
FC2ブログランキング
にほんブログ村
ブログランキング・にほんブログ村へ