Category:本棚・書評

2011年04月30日

【書評】不景気でも儲かり続ける店がしていること5

販促を継続的に“実践”しようとする店舗経営者が踏まえるべき原則


昨日の金猿くらぶで紹介されていた本、早速読みました。(金猿くらぶへの参加についてのブログ記事は昨日付けです。)
moreさんには本書のご推薦、ご手配の御礼を申し上げます。

【レビュー】
繁盛店になるためには、「新規客獲得」→「固定客化」→「ファン客化」というステップを踏むべきだと筆者は言います。

多くの経営者が、そのための施策が“刺激的”だからという理由で新規客獲得策に力を入れて、その後のステップに力を注いでいないと指摘しています。
これを『釣った魚に餌をやらない』という言葉で表されるように、恋愛で言えば、失敗するパターンです。

そうではなく、恋愛での「出会い→「デート」→「告白」と同じような、ステップを踏むべきなのです。

本書では、マス広告などによる「新規客獲得」については多くを割いていません。
その代わりに、「新規客獲得」のあとに行うべき顧客情報の収集方法、「固定客化」のためのニュースレターの作成法、そして「ファン客化」のためのポストカード販促の方法について、詳しく述べています。

特に、ニュースレターやポストカード販促については、具体的にどのように行えばよいのかが分かります。
どんな頻度で出せばよいのか、どんなポストカードを作ればいいのか、どんなことを書けばいいのか、どういう出し方をすればいいのか、などなど。

平易に書かれていますし、たくさんの手法を盛り込んでいるわけではありません。
創業時の決意を思い出して、本当に販売促進を実践しようとする経営者のための一冊です。

【参考図書】
本書で紹介しきれなかった部分について、何冊かの参考図書が挙げられています。

筆者のWebサイト 販促アイデア大百科

【その他コメント】
自分がリピーター、ファン客になっているお店を思い起こすと、本書の手法が正しい方法だと確信できますね。

2006年04月03日

【書評】ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる5

【評価】グーグルという断面からWebを斬り抜いた快刀乱麻


【概要】
著者は、次の十年の三大潮流は「インターネット」「チープ革命」「オープンソース」であると言う。そして、これを体現している会社「グーグル」を通じてウェブの進化というものを論じている。
そのポイントは、例えば以下のようなものである。
  • グーグルが「世界中の情報を整理し尽くす」というビジョンに、いかに本気で取り組んでいるか。
  • コンピュータ・システムをインターネットの「こちら側」ではなく、「あちら側」に置くという転換。
  • オープンソースによって、これまでの延長からはとても考えられないほどの低コストを実現したこと。
  • インターネットによって初めて可能になったロングテールから収益を得るビジネスモデル。
  • グーグルには単なる広告収益に止まらず、「富の再分配」という社会モデルまで埋め込まれていることについて。
  • これまでのどの企業とも異なる社内組織マネジメント。
  • 既存のネット企業とは異なり、社会に変革をもたらすテクノロジー会社であることについて。

【コメント】
本書は、ビジネスモデルを解き明かし、さらに社会のあり方・パラダイムシフトまで論じている点で、最近流行りの他のグーグル本とは一線を画す。
「ビジョン」「システム構築の思想」「それを可能にした技術革新」「コスト競争力」「イノベーションを奨励するために作り上げているワーキング・カルチャー」など、ビジネスパーソンが知りたいポイントが、明確に述べられている。

情報自身が淘汰を起こすという民主主義が、「プロフェッショナルとは何か」ということを問いかける。専門家と言われる人が、占有した情報と権威で影響力を持った時代は終わり、価値ある情報を発信し続けなければ競争に負ける。
羽生善治氏の「決断力」でも【インターネット=高速道路】ということが述べられていた。著者もこのことを引いているが、一定の情報は誰でも入手できる中で、いかに優位性を発揮するかというパラダイムになったことを理解させられる。


第5章でオープンソース現象「マス・コラボレーション」の事例として、途上国向けコレラ対策の課題を、見ず知らずの関連プロフェッショナルたちがネット上で短時間で解決してしまったことが紹介されている。そして以下の村山尚武氏のブログの内容を引いている。
創造の結果だけでなく過程を共有することによって参加者が互いに触発し合い、これまでに無かったもの、素晴らしいものを作ることができるのだ。それはまた、無数の凡人が互いに思考を共有し、足りない部分を補い、アイディアの連鎖反応を起こすことにより、より大きなインパクトを(大げさに言えば)文明に与えることを可能にするのである
「ネットワーク組織にはファシリテーションが求められる」とはファシリテーションのテキストによく登場する主張だが、本当のネットワーク上ではこうした創造が促進されるのだと本質的共通点を感じた。


日本の場合、特にエスタブリッシュメント層には、インターネットの「悪」の部分を強調しようとする傾向が強いと言う。著者はこの点に否定的だが、私は理解できる面もある。グーグルがあらゆる情報を持ったとき、彼らは「テクノロジー(コンピュータ)によって扱いプライバシーは侵害しない」と言うかもしれない。しかし、それを保証するものは何もない。
例えば銀行と同様に、高い倫理観と信用が求められる。このレベルの、インフラとしての「信用」をどう構築するかが問われるだろう。


グーグルを切り口にしているものの、ウェブの状況について比較的網羅的に述べられていると思う。おススメの一冊だ。続きを読む

2006年03月30日

【書評】下流社会 新たな階層集団の出現2

【評価】あくまでも仮説のひとつとして読む


【概要】
「昭和4世代欲求比較調査」(2004年11月、調査対象800 ※有効回答数861から男女別世代別各100名を無作為抽出)、「女性階層化調査1次調査」(2005年5月、調査対象2000)、「女性階層化調査2次調査」(2005年6月、調査対象600)の3調査に基づいて書かれた本。

「中の中」という意識を持った中流層が減り、「上流」と「下流」に意識が分化する傾向にある。特に中から下に下降する人が多い。そこでこれを「下流社会」という造語で呼ぶ。「下流」はいわゆる「中の下」であって「下層」とは異なる。

これまでは、「中」に向けて商品を大量につくって売ることが求められてきた。だが、下流社会では、「上流」に物を売るノウハウが求められるようになってくる。

下流社会において階層格差の固定化を防ぐには、基本方針として所得の低い人ほど優遇される「機会悪平等」を掲げる必要がある。具体的には、「下駄履き入試」や「東大学費無料化」「上流のノブレス・オブリージュ」などを仕組み化すべきだ。


【コメント】
統計的調査を基礎にした本は、注意深く読むことが求められ、流し読みするのに適した本ではない。この種の本では著者を全面的に信頼することは危険であるからだ。

本書の中盤では、独自の調査結果による様々な見方を示している。世代、性別、収入などによって、性格、消費、食生活などはどのように異なるのか。どのセグメントが、どのようなライフスタイルを持っているのか、などなど。

マーケティングとして、どのような商品をどのような層をターゲットに売るべきか。著者のように仮説を立てて臨むことは大事だし、また統計的に十分なサンプル数を確保することが実務上は必ずしも正しいとは限らない。そして実務では、必ず打ち手に対して検証が存在する。結果が、仮説の正否を明らかにしてくれる。

しかし「社会論」となると話は別だ。カバーには「消費社会論」と書かれているが、確立した論には至っていないと思う。最後「おわりに」に書かれている「機械悪平等」の提言も、取って付けたようで訴えるものがあまりない。本書は、あくまでもマーケティング上の仮説の一つとして読むべきだろう。

また、写真とそれに付けられたキャプションが酷く意図的で、見るに堪えないと思ったことも記しておく。

2006年03月29日

【書評】上司は思いつきでものを言う2

【評価】タイトルだけ見れば十分


【概要】
著者は「窯変源氏物語」などを書いている作家。
本書を「あなたの創造性を高める本」でなく「停滞した日本のサラリーマン社会はなんとかならないのかよ?」を考察する本と言う。

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「よく考える」は、思考を集中させて考えること。だが、実はこれは相手が答えを知っている時に言われる。「よく考えてみィ」は「お前はバカか?」と同義だ。
これに対し「ちょっと考える」は、思考を拡散させて考える。思考が自由で、いろいろな考えが浮かんでくる。
「よく考える」と「ちょっと考える」は、そのこと言葉の表面とは正反対の内実を持っている。「よく」は問題を出す人の立場(メリット)を、「ちょっと」はそれを考える自分の立場(メリット)を考えるのだ。

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日本の会議は前提の最終確認で終わる。もし会議に「頭のいい人」が出席していれば「ちょっと要点を整理しましょう」となるが、いなければ前提の確認以後は会議は実質的に終わりで、「気楽な雑談」になる。ここに「思いつき」が飛び出すのだ。

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思いつきに対する最も具体的な対処法は、「あきれる」ことだ。論争にしてはいけない。

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日本の会社は、現場の声を聞いて大きくなった。最大の問題は、現場と会社の間に分裂が生じていることだ。これを放置してきたから日本社会はおかしくなった。


【コメント】
日経ビジネスのレビューに「一種の文化論」とあるが、アイデアを膨らませた妄想に近い随筆。確かに作家らしい着想は面白いかもしれないが、読者を延々と振り回して、その上開き直っている文章には、読んでいてストレスがたまる。

一応役に立ちそうな部分を上記「概要」にまとめはしたが、ここは筆者に従って「あきれる」ことにしたい。

2006年03月11日

【書評】経営の大局をつかむ会計3

【評価】ビジネスパーソンが学ぶべき会計がここにある


【概要】
これまでの会計の本は以下の2つに大別される。
一つは、「会計の専門家が書いた本」で、技術的な説明は優れているが、会計のプロ向けであってビジネスでの使い方が説かれていない。もう一つが、「経営者の書いた会計の本」であり、会計の本質的な使い方が説かれているが、技術的な説明が不足しており財務諸表などがあまり出てこない。
本書はこの2種類の会計の本の間の溝を埋める「会計のアマチュアであるビジネスパーソンのための本」として書かれている。

著者は経理マンになるのでもなければ、とにかく最初から財務諸表と格闘することが第一だと言う。そして以下のような使い方を説いている。
  • 金額の大小を反映させた図「比例縮尺版BSとPL」によってビジネスモデルを感覚的に把握する
  • 2期間の数字の変化から背景にある問題を把握し、打ち手を考える
  • 「儲け方」をデザインし、未来のPLとBS=ビジネスプランをつくる

【コメント】
ビジネスコンサルタントがどのように会計を使っているかを、よく表現した一冊と思う。
ビジネスパーソンに必要な会計は、経理学校で勉強するような会計とは異なる。そのことを簡単に表現した良書。

「比例縮尺版BSとPL」などは、知ったらすぐに実践できるだろう。ただ、2期間比較やビジネスプランについてはこの本を読んだだけですぐに実践に移せるかどうか。「練習問題」もついているが、この本の外で見本を見たり指導を受けたりしなければ身に付かないだろう。続きを読む

2006年02月04日

【書評】学びを稼ぎに変える技術4

学びを稼ぎに変える技術
学びを稼ぎに変える技術
藤井 孝一 森 英樹
クロスメディア
パブリッシング(2005-11)

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【評価】これから学ぶ人よりも既に学んだ人への強烈なメッセージ


【概要】
週末起業フォーラム代表の藤井孝一氏とメルマガ経営戦略考−日経記事から毎日学ぶ経営戦略の原理原則で有名な森英樹氏の共著。

第1部は藤井氏の執筆で、「学ぶ」サラリーマンだった著者が、「稼ぐ」ことに転換して今を迎えているという自身の体験を語っている。藤井氏のメッセージは、「学んだ」人はすごい、でもそれだけではもったいない、「学ぶ」ことができた人なら必ず「稼ぐ」ことができる、というものだ。

第2部は森氏の執筆で、どうすれば「学び」を「稼ぎ」に変えることができるかという具体的な方法論を提示している。その基本は「立ち位置」を変えるということ。情報受信者から発信者へ、「買い手」から「売り手」へ、ということだ。情報を発信すると世の中に専門家として認知される。そのことによって客さんに、自分を見つけてもらう。これが週末起業の基本なのだ。
売るべき商品を考える切り口は、「モノを売る」「ワザ・スキルを売る」「知識・考え・情報を売る」「場・ネットワークを売る」の4つ。そしてコンサルティング商品の基本的なパターンは「診断」「プランづくりの支援」「プラン実現の支援」「代行」の4つ。このように実践的に方法論が説明されている。

終盤の第10章では、週末起業の成功事例が12例紹介されている。
似顔絵イラスト名刺作成「かでる工房」やステイショナリー評論家の土橋正氏などである。


【コメント】
藤井氏の第1部は、前著までと同じ内容も少なくないが、以下のメッセージにはこの本特有のメッセージを感じた。
「学びで稼ぐ」というタイトルの本ですが、学ぶことも、稼ぐことも、「幸せな人生を送る」という命題の中では、手段に過ぎません。もちろん、この手段が大事なのですが、さらに先、つまり、学んで、そして稼ぐことで何を手にしたいのかを考えることは、もっと重要です。

森氏の第2部は、非常に実践的。
さらに、週末起業の具体例が示されているところがこれまでにない良い企画だ。週末起業家は本業の会社に知られることを避けるために、実名での登場が少なく、これまでの週末起業関連の著作でも何となくぼかされた記述が多かった。読者のフラストレーションを吹き飛ばす12例には大きな説得力がある。

「週末起業」に興味のある人の中でも、既に資格試験などで「学んだ」ことがある人には特にお勧めの一冊だ。

2006年01月26日

【書評】週末起業チュートリアル4

【評価】「おあずけ」人生は卒業して、今すぐやりたいことをやるべき


【概要】
著者は、自身の「週末起業」(ちくま新書)でサラリーマンの不況対策として週末起業の意義を説いた。しかし、実際には会社への不満が週末起業の動機になるケースが多いという。
本書で著者は週末起業を次のように位置付けている。会社に物心両面で依存していた「ぶら下がリーマン」は、「何を始めればいいか分からない」状態になってしまいがちだ。まずは会社との距離を取り、収入と気持ちの両面で会社から独立する「大人サラリーマン」を目指すのが「週末起業」である。

本書で語られているのは、「週末起業」の手順ではなく、「週末起業」に成功する人の行動特性である。特に、「金銭感覚」「時間管理」「人脈構築」の3つの観点で詳しく解説されている。
例えば、人脈構築では、「人脈とは一緒に仕事をしてつくるものだ」と説いている。出版社の編集者と名刺交換をしたら、企画書の一つでも送らなければその名刺は絶対に活きない。

著者には「情報起業」(フォレスト出版)という著作もあるが、本書では情報起業だけでは限界があると言う。「ネタ切れ」と「たいしたお金をいただけない」というのが弱点なのだ。これに対し「コンサルタント」は、仕事の中からネタを継続的に仕入れることができ、双方向性があるので付加価値が高まる、として週末起業家にコンサルタントを勧めている。
そして具体的な手順として、「肩書きを考え、名刺を作る」「商品を作る」「情報発信で顧客獲得」の3ステップを示している。


【コメント】
本書の特徴はまず、筆者自身の体験が強烈な思いを持って語られるところにあるだろう。転勤・海外勤務による家族崩壊の危機。これが筆者の原体験のようだ。私はこの体験談には非常に強く共感し、「週末起業」の意義を強く感じた。

本書の主眼である「金銭感覚」「時間管理」「人脈構築」については、他書にないという程の内容ではないが、非常に実際的で説得力があった。机に眠っている名刺が山ほどある人には突き刺さる指摘だろう。

前著「週末起業」では広げていた週末起業の業種もコンサルタントに絞り込まれ、「情報起業」の限界を乗り越えようとしている。著者自身が、著作を重ねるごとに少しずつ方法論を整理してきていることが分かる。この点に私は非常に好感を持った。

ちなみに著者の肩書きは、「米国進出支援コンサルタント」⇒「商店街コンサルタント」⇒「書店コンサルタント」⇒「ITコンサルタント」⇒「オンラインショップコンサルタント」⇒「創業コンサルタント」⇒「経営コンサルタント」と変化したそうだ。やってみて試行錯誤することが大事だということの証左のようにも思えた。

2006年01月25日

【書評】情報起業―あらゆるビジネスに応用&発展可能な「小資本起業ノウハウ」4

【評価】メルマガから始める 〜藤井孝一氏が起業したやり方〜


【概要】
週末起業」(ちくま新書)の著者が、そのノウハウを「情報起業」という切り口で明らかにした一冊。情報起業は、単に情報を売るだけでなく、情報を発信して顧客情報を得、自分の商品に情報による付加価値を付け、自分のお客さんをつくる起業法。

第1章では「今までの小資本起業法の間違い」が説明される。すなわち、時間の切り売りである「代行ビジネス」や、仕入先開拓・在庫管理に困難がある「小売業」は、成功が難しいと言う。前著「週末起業」で挙げられていた「代行ビジネス」「オンラインショップ経営」に基本的には否定的な見解を示している。

第2章は「情報起業とは何か」を説明している。情報は、オリジナルで、目減りせず、再利用ができ、これまでの自己の経験が生かせる。さらに顧客の情報を獲得することで、儲かる可能性を高くできると主張する。

第3章では、「著者自身の情報起業体験」が詳しく語られる。要するに「専門家になる」ことを目指す行動・ステップが解説されている。

第4章は「具体的な情報起業のやり方」の解説。自分の棚卸から、情報発信の対象者の集め方、情報発信の手順まで、具体的に細かく説明している。

最後に第5章では「情報起業の発展のさせ方」として、セミナー開催、情報のモノ化、コンサルタント、会員組織化、お墨付き付与、マッチングの6種類を挙げて、情報起業が発展性のある方法であると述べている。


【コメント】
本書は、前著「週末起業」が概説的すぎて具体性にやや欠ける面があったのを補う著作であると考えられる。本文中では、恐らく意図的に「週末起業」という用語は使われていないが、小資本で情報の発信から始めるという「やり方」は、「週末起業」のやり方そのものだ。

特に第3章と第4章が本書のポイントであり、「自分自身がどうやったのか」「具体的にどうやったらいいのか」が記されている。
ただ、どのような切り方をしても、結局は「コンサルタント業」に帰結しているという印象は否めない。従って「実業家として新しいビジネスモデルを作りたい」のような思いを持っている人には、物足りない印象を与えるのではないだろうか。

私はしかし、前著で著者自身が挙げた「代行ビジネス」「小売業」に対して否定的な姿勢で書いている著者の「前進」に好感を持った。著者自身が、起業コンサルタントとして進化していることが読み取れるからである。

2006年01月21日

【書評】ホテル戦争―「外資VS老舗」業界再編の勢力地図3

【評価】ホテル戦争の登場人物の各ホテルを大まかに知るために


【概要】
2007年頃にかけて東京に外資系の最高級ブランドホテルが参入してくるホテル業界の2007年問題。これに対応しようとする老舗ホテルの改装投資などで「ホテル戦争」の様相を呈している。
本書は、特に19のホテルを取り上げてそれぞれの特徴や2007年に向けての戦略などを紹介し、「ホテル戦争」を解きほぐしていこうという試みだ。

著者は、これまでの競争と2007年ホテル戦争では、基本的な構造が異なるとしている。これまでの構造とは、過去の「御三家」と「新御三家」の戦いであり、これに外資系超高級ラグジュアリーホテルの「新々御三家」が加わるという考え方である。新世代が勝つか旧世代が勝つか、という見方だ。
これに対してホテル戦争の構造は、スタイリッシュな「スモール・ラグジュアリーホテル」、モダンな「グランドホテル」、クラシックな「老舗ホテル」という3つのカテゴリに分化し、その中でのトップホテルがそれぞれ勝者になるという見方だ。

名古屋、大阪、福岡などでの外資ホテルの進出と競争状況の変化なども紹介しながら2007年の東京での競争の主役のホテルを紹介していく。そして「ザ ペニンシュラ 東京」、「ザ・リッツ・カールトン東京」、「帝国ホテル」の3ホテルが勝者になるだろうとして結んでいる。


【コメント】
コンピュータの「2000年問題」、オフィスの供給過剰の「2003年問題」、団塊の世代の大量退職「2007年問題」と並んで称されるホテルの2007年問題。この問題の概略を知るには手ごろな本だ。逆に各ホテルの踏み込んだ戦略や実態を知ろうとするのであればこの本は適していないだろう。

上記の【概要】では極力整理して示したが、実は著者の主張の構造は分かりにくい。
例えば、最初にカテゴリ別の競争になるとしながら、最後の勝者予想では「グランドホテル」が含まれていない。2007年はエリア別競争でもあると言いながら、前半で示されたエリアの区割りと後半での区割りが対応していない、等々。
各ホテルの大まかな紹介本と割り切らないと、読んでいてストレスを溜めることになる。

最後の3ホテルの勝者予想についても、理由は明確に示されていない。
この本で利用するホテルを決めるのは適切でない。雑誌の特集や個別ホテルについて詳しく書かれた本で情報収集して、結局実際に行ってみたり評判を聞いたりすることが必要だ。
本書はそのために「どんなホテルがホテル戦争の当事者なのか」を知る目的で利用されればいいと思う。

2006年01月20日

【書評】週末起業4

【評価】「週末は、起業家になる――。」


【概要】
サラリーマンが会社を辞めずに起業する「週末起業」、その概念とメリットを説いた本。著者は特定非営利活動法人「週末起業フォーラム」の代表。

第1章では、サラリーマンの不況対策として週末起業を捉え、その意義を説いている。

第2章では、週末起業の魅力を、リスクと元手なしに「起業」というエキサイティングなライフスタイルを簡単に手にすることができるところにあるとして、そのメリットを説いている。例えば、本業のサラリーマンから得たキャッシュフローで運転資金を賄えることなどを挙げている。
さらに、週末起業のビジネスのモデルとして「オンラインショップ経営」「代行ビジネス」「情報発信ビジネス」「オンライン教育、コンサルティングビジネス」「マッチング・ビジネス」の具体例を紹介している。

第3章では、週末起業のテーマは「やりたいこと」→「できること」→「時流に乗っていること」の順に考えるべきことを説いている。そして顧客獲得の手段としてメールマガジンを利用することを勧める。

第4章・第5章では、それぞれ税金と法人化について説明している。しかしまずは、ビジネスを軌道に乗せることが先決であるというスタンスである。


【コメント】
新書らしく一冊の中に、浅くではあるが「週末起業」の概念から、税金・法人化のことまで広く収めた良書。事例に具体性・リアリティ薄く、踏み込みが浅いと感じる部分もあるが、少ない紙面でよく説明していると思う。

「起業」と言えば国民生活金融公庫などから融資を受けてフランチャイズチェーンに加盟して店を経営する、というようなイメージを覆す動きを作った「週末起業」の功績は大きいと思う。

最後に留意点。第5章の「確認会社」については、本書の中にも注意の記述があるように、商法の改正(新会社法)で最低資本金規制が撤廃されることにより位置付けが変わるので、注意されたい。

2006年01月13日

【書評】パイロットフィッシュ4

【評価】あまりにも透明で美しくそして危険な記憶

【感想】
聖(さとし)の青春」「将棋の子」を書いた作者の、小説作品。

あまりにも透明で美しくそして危険な記憶。それはきっと誰にでもあるのだろう。

初めて読んでからしばらく時間が経ってから読み直したが、恐ろしいほど情景が残っていて驚いた。

この種の本は、また時間を置いて読んでみると印象が全く変わることがある。ボロボロ泣いたはずの本に何も感じなくなっていたり、面白くないと思った本になぜか惹き付けられたり。

これほど情景と感情が同じだったということは、この間の私自身があまり変わっていなかったからだろう。



<参考>

2006年01月12日

【書評】うさぎとトランペット3

【評価】小学生の女の子のお話を読めるという人なら・・・

【感想】
小学校5年生の宇佐子が主人公。
どんなスタンスに立って読んだらいいのか、迷ううちに読み終わってしまった。小学生には正直なかなか感情移入しにくい。何かふわふわもやもやした感じで「小学校の頃はそんな風だったかなぁ」と思ってしまうし、かと言って親や大人や上級生の立場で読んでも面白くない。

作者の音楽に対する感性の文章表現も、前作「楽隊のうさぎ」ほど冴えていない。と言うのも主人公が音楽をやるところまで行っていないので、音楽に触れてはいるが曲全体の描写自体があまり多くない。単独の音やフレーズが描かれている方が主で、独特のドライブ感ある文に出会うことができないのだ。

また作中に、「楽隊のうさぎ」の登場人物たちが「お兄さん・お姉さん」として出てくるが、前作を読んでいないと彼ら上級生の話は分かりにくいだろう。

残念ながら読後に「読んでよかった」とは思えなかった。かと言って「読んで損した」とまで思えない、ふわふわもやもやした一冊だった。

2006年01月10日

【書評】ザ・ホテリエ―最強ホテルマン9人の人間ドキュメント4

【評価】サービス企業を率いるトップに学ぶマネジメント

【概要】
ホテルのトップ級9人について、その考え方や成長を取材して書かれた本。1人につき1章を割くという構成。

筆者は、優秀なリーダーの共通点として以下の4点を挙げている。
  1. スタッフ自身が自らの意志で仕事を進める環境を作る。
  2. 成功体験をチーム全員で共有する。
  3. チームの価値観を統一する。
  4. 現状に満足せず、常に変革を求める。


【コメント】
9人の言葉や行動、経営から印象に残ったものを要約して記す。
  • 当時人が定着せず会社の魅力不足を実感した。魅力をいきなり得るのは無理だが、目指す将来像に夢を持たせることは可能であり、それが唯一できることだった。(星野)
  • 月間優秀社員の対象には正社員・パート・アルバイトのほか、配膳会のスタッフやテナントの従業員も含まれる。配膳会やテナントもホテルを形成している重要な要素だからだ。(田中)
  • 「かつてはホテルのレストランが王様だった。10年前は、ホテル西洋銀座で食事をすることは、銀座のほかのレストランに行くより特別な思い入れがあったはず。もう一度、ホテルのレストランを王様にしたい」(ナカノ)
  • バンタは、都ホテル東京が提供すべきサービススタンダード、スタッフとして持つべきミッションステートメントを示して見せた。文書を通しての講義形式や、自らが客の立場に立ったロールプレイングなどの方法で。(バンタ)
  • 社長になって最初の3年間、最も力を注いだのがこの社風づくり。社風にはつくり方がある。トップがその内容を部下に言葉で伝え、方針を示し、そして実際に判断している姿を見せていく。この繰り返し。(窪山)
  • システムに対するこだわり。それは目指すサービスのコンセプトそのものだった。つまりそれは「お客さまの顔が見えるホテルにしよう」というもの。(杉本)
  • 「お部屋に案内するまでの間に、しなければならないことは?」「お客さまのお名前を最低2回は呼ぶこと」「そのとおり、忘れないようにね」(荒木)
  • メーカー時代に学んだこと。それは「現場は電話一本では動かない」ということ。小さなホテルでも同じだ。料理の依頼なら調理場に顔を出す。会場の依頼なら宴会場に赴く。(岡田)
  • 2000年にパラダイム・シフトをし、価値観の近い同志を率いて研修をやり始めた。すべては強い組織をつくるため。最も大切な業務を"研修"と定めた。研修は全従業員が受講するまで毎月実施した。(葛谷)
現在のリーダーである彼らを形作っているものとして、20代後半から30代にかけての経験が大きいように思った。その点では非常に励まされる本だった。

2006年01月09日

【書評】マンガでわかる お客様が感動するサービス2

【評価】感動を「他人の不幸は蜜の味」という文脈で捉える表面的な本

【概要】
本書では「劣位アクション」という概念をキーにして感動を捉えている。著者は「感動とは、一般に優位な立場にある人が、劣位な立場にある人に対して感じる感情」であるとしている。
そして感動を以下の3パターンに分類している。
  1. 自分より劣位な人が努力している姿を見る時
  2. 自分より優位な人がある時弱い立場になり、努力してそこから這い上がって成功する姿を見る時
  3. 劣位だった自分の地位が優位に転じた時
この考え方に従って、大小の具体例を列挙することに紙幅の多くが割かれている。

【コメント】
「マンガでわかる」といっても全編マンガなのではなく、どちらかと言うとイラスト・挿絵に近いイメージ。1節に対して、要約的なマンガが1ページついているという構成。基本的には本文を読まなければ、内容の理解は難しい。

感動のサービスを、サービス提供者が自分の地位を下げることで実現するものとして捉える筆者の見方はあまりに皮相的で、共感できなかった。常に人間関係を優位・劣位の関係でしか見ず、その範囲で感動を「作ろう」としても、その感動は所詮作り物にすぎないと思う。

挙げられている具体例も、無理にかき集めた感があり、納得できないものが多かった。

2006年01月03日

【書評】ウォルト・ディズニーの成功ルール

ウォルト・ディズニーの成功ルール
ウォルト・ディズニーの成功ルール
リッチ・ハミルトン(著)
箱田 忠昭(訳)
あさ出版(2005-11-24)

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【評価】成功ポイントの解説にとどまらず読者に語りかけてくる


【概要】
本書ではディズニー成功のポイントを16のルールとして章立てし、解説している。
中でも第1章は、「夢をかなえるための12の秘訣」と題されており、「まず考えること」や「夢に名前をつけること」などのポイントが豊富だ。


【コメント】
本書には以下のふたつの性質があると思う。
  • ディズニーの成功のポイントをコンサルタントが解説した本(実務書)
  • 自己の行動を変えるための本・ワークブック(自己啓発本)
ディズニーの成功のポイントを解説した本としては、突出している訳ではないと思う。実務的な観点に絞った類書の方が、しっくりくるという方も多いだろう。
しかしこの本のポイントは、その成功の法則を、読者自身の行動にフィードバックするように問い掛けてくることだと思う。

まず前者の実務書としての私が関心を持ったのは以下の点。
  • 行動の根幹である「サービステーマ」という綱領。最初は「私たちは喜びをつくり出す」というものだったが、その後少しずつ書き直されているそうだ。また、服装や身だしなみの基準も、時々の事情やファッションに合わせて改正されている。
  • ディズニーには「ゲスト学」がある。常にゲストの意見を収集し、業務に反映しているのだ。そして、ゲストは具体的な質問をすると喜ぶ、ということを知っているという。
  • ディズニーは科学的だ。1人のゲストが1日に60回キャストとの出会いを経験すると試算している。「どんな時でもゲストに親切にする」というだけでなく、「1日に60回ある接点の全てでゲストに親切にする」と具体的に考えているのだ。
  • 「ゲストサービス賞賛カード」というシステムがある。キャスト(従業員)がいいことをしたら書き込んで渡すこのカードを、毎日10枚以上渡すことがマネジャーの目標になっている。
  • ゲストの前にいることを「オンステージ」といい、うまくできたときは「グットショーだった」という。こうした独特の言葉遣いがディズニーの企業文化の発展に役立っている。

そして後者の自己啓発本としてのポイント。
  • 自分が一番大切にしていること、自分の価値、自分の技能を問い掛けられる。さらに、自分に対して実行していること、家庭や職場で実行していること、特に時間を費やしていることを記述する。そして、その2つを比較し、変えるべきことをリストアップする。
  • 急ぎの仕事に振り回されず、重要な仕事に専念できるよう、スケジュールを立てる。
  • 自分の連絡先リストの中から、自分を理解し支援してくれそうな人を24〜25人選び出す。その人たちと1ヶ月に1度は連絡を取るようにする。そうすれば、自分の個人後援会ができる。もちろん、その人たちの助けになることを忘れずに。


2006年01月01日

【書評】決断力4

決断力
決断力
羽生 善治
角川書店:角川oneテーマ21
(2005-07)

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【評価】羽生ファンへの一冊、羽生将棋の思考の一端が明らかにされる


【概要】
将棋の第一人者、羽生善治がその思考の一端を明らかにした書き下ろしの一冊。
将棋を中心に彼の考え方が示されるが、将棋以外についてもよく勉強されていることが分かる。本書の中にも、例えば米国カーネギーメロン大学(ロボット研究)の金出武雄氏、フィールズ賞受賞の小平邦彦氏、カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授の中村修二氏、マイケル・ジョーダン氏などの言葉が引かれている。

ある程度将棋や羽生について知らないと、話が分かりにくいと思う。誰でも面白く読めるというよりは、将棋ファン・羽生ファンが対象だろう。


【コメント】
著者自身が読者を意識しているからだろう、教訓として使えるような表現も多く見られる。しかし、本書の本質は、羽生自身の気概・気構えを彼自身が世の中に宣言しているところにあるように思われる。

彼の言葉から何を読み取るかは、まったく読者に任されている。私の興味に合致したのは以下のような内容だった。要約し引用する。
  • 企業秘密だから言わないが、自分が「ハブ・ヨシハル」と対戦したら攻略する作戦はある。しかし自分で分かっていてもその欠点は消せない。トッププロの欠点を裏返すと、それが一番の長所であることが多い。だから消そうとするとまた別の欠点が出てきてしまう。
    ⇒長所についての見方に納得させられた。
  • 将棋にかぎらず、考える力というものはそういうものだろう。何事であれ、一直線に進むものではない。
    ⇒「考える」ことは一直線でなく、行きつ戻りつを繰り返すものだということに共感した。
  • 若いときは、勘とかハートをベースにした戦いはできないから、片っ端から読みで勝負する。簡単な一手を指すにも、若手は百手も二百手もと膨大な量を読んで指すことになる。
    ⇒若いときにはそうした後から思うと不必要に思えることを積み重ねることが大事、と読んだ。
  • 対局が終わったら、その日のうちに勝因、敗因の結論を出す。そして、翌日には真っ白な状態でいたいと思っている。勝った将棋もすぐに忘れたい。
    ⇒個別の解をそのままストックしても役に立たない。原因分析をして、それを体に染み込ませて初めて役に立つ。
  • 情報過多の時代には、自分なりのスタイルや信念を持つことが、非常に大事。それが、イメージを思い浮かべたり、ものを創るといった力につながる。
    ⇒「自分がある人」になることがクリエイティビティの出発点。
  • 将棋を上達するためにしてきた勉強法は、「アイデアを思い浮かべる」「それがうまくいくか細かく調べる」「実戦で実行する」「検証、反省する」の四つ。
    ⇒ビジネスでも基本は同じ。まさにPDCA。

2005年12月30日

【書評】質問力―話し上手はここがちがう2

【評価】「普通の人」を置き去りにする姿勢が残念

【概要】
本書の狙いは要約すると以下の通り。
上達するためにはよいものをたくさん見ることがいちばんの早道なので、質の高い対話の具体例を数多く取り上げる。これによりコミュニケーションのよしあしを判断する価値基準をつくってほしい。
「質問力」という力を認識できるようになると、自分の質問の実力を常にはかろうとするフィードバックが起こり、これが実力向上につながる。この回路を作ることが本書の目的だ。

著者は、コミュニケーションの秘訣は「沿いつつずらす」ことにつきると言う。だから本書でも「沿う技」と「ずらす技」を解説している。「沿う技」とは例えば、「うなずき」「あいづち」「言い換え」「引っぱってくる(引用)」「オウム返し」などだ。「ずらす技」は「整理する」「具体化する」「抽象化する」「自分の経験に絡ませる」などだ。
そして、多くの対談事例を取り上げ、ケーススタディとして質問・対話の構造を解説していく。
概略以上が本書の内容だ。


【コメント】
筆者はケーススタディの中で例えば「リプトンの深い洞察力の勝利である。普通の人にはなかなかできないハイレベルな質問だろう。」と主たる読者である「普通の人」を突き放してしまう。
すると読者は急に冷めてしまう。だから筆者が「自分はこんなハイレベルの対話のポイントが分かるんだ。凄いだろ。」と言っているように思えてくる。
読者に沿ってくれていないのだ。

ほかにも「質問が非常にハイレベルである。(略)知性がなければ、このような質問はできないだろう。」とか「すごい質問だ。普通の人がこんなことを言えるだろうか。」など、この姿勢が目につく。

プロローグにある「相手にお金を出させて、仕事を請け負うためには、対話の中で相手を納得させなければならない。ましてや建築の要に、建てるまでは現物を見せられないような物を作る場合、『コミュニケーション力(質問力)』の高さが生命線になるのである。」という一節は、コンサルタントとして非常に重要だと思ったし、内容にも非常に優れた技が凝縮されているとも思ったが、著者の姿勢が気になってこの本には終始共感を持つことができなかった。

2005年12月29日

【書評】起業・独立開業にもってこい!3日間でできるLLP設立実務ガイド

3日でできる LLP設立ガイド
3日でできる LLP設立ガイド
五十嵐 博一 渋谷 雄大
日本実業出版社(2005-11-25)
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【評価】
LLPの設立について必要最小限のことがコンパクトにまとまった良書

【概要】
2005年8月1日に施行された「有限責任事業組合契約に関する法律」で制度化された「有限責任事業組合」(LLP:Limited Liability Partnership)の設立手続きなどについて解説した実務書。

大きくは以下の3点で構成されている。
  • LLPとは何か
  • LLPに向いている事業は何か
  • LLPの設立手続きについて

109ページという少ない紙面にコンパクトにまとまっている。


【コメント】
法律などの難しい説明は一切抜きに、LLPの設立に最低限必要な知識を解説している。私自身は実際に設立した訳ではないが、書類の記入方法なども例示されており、十分役に立つと思う。著者に短期間でLLPを設立した実績があるので、記載内容にも説得力がある。

本書を読んで私が特に感じたことは以下の2点。
  • LLPは当然ノウハウが活かし合える2人以上での事業でなければ意味はないが、やはり大人数になりすぎると機能しないだろう。自由な意思決定ができると言っても、意見集約が難しい規模になっては、運営が難しくなる。
  • LLPは常に活動していなければならない訳でなく、LLPとして活動する必要のある受注を得たときに活用すればよく、それ以外のときは使わないで置いておけばよい、というアドバイスには「なるほど」と思った。確かに均等割の法人税が課税されないメリットはこのように享受できる。

コンパクトで1000円という価格設定にも納得・満足。


<参考情報>
著者の五十嵐氏とは研究会でご一緒している。
著者の有限責任事業組合「アントレポートLLP」のブログでは、設立時の手続きの様子などが公開されています。

2005年12月21日

スタジオジブリの小冊子『熱風』をご存知ですか?

鈴木敏夫社長、宮崎駿監督、高畑勲監督などの人物と作品で有名なスタジオジブリが、小冊子『熱風』を発行しているのをご存知だろうか。

「スタジオジブリの好奇心」というキャッチコピーのついた冊子で、非売品。『熱風』というタイトルは、ジブリ(ghibli:本当はギブリと読むらしい)というイタリア語が持つ意味だ。全国のジブリ関連書常設書店・三鷹の森ジブリ美術館での配布と、通信事務経費などの実費を支払っての定期購読という入手方法がある。

この冊子はしかし、トトロやハウルの動く城のようなイメージで購読すると裏切られることになる。内容は非常に面白いが、取り上げられる特集テーマは例えば「会社とは?」(2005年12月号)、「映画評論は今、どうなっているのか」(2005年11月号)、「世代を超えて支持される歌がないのは、何故?」(2005年10月号)といったものだ。テーマはいい意味で行き当たりばったりで選ばれており、ある意味では本当にジブリのその時の関心事の一断面だと思う。

派手さはないが、いいテーマについて、いい文章を集めている良質の出版物だと思う。
皆さんに是非お薦めしたい。


ジブリ出版部のページ
『熱風』今月号のご案内
ジブリの小冊子「熱風」の定期購読始まる YOMIURI ONLINE
54ページ分の好奇心 「熱風」編集長に聞く YOMIURI ONLINE
54ページ分の好奇心 「熱風」編集長に聞く(続き) YOMIURI ONLINE

2005年12月03日

【書評】ロジカルシンキングのノウハウ・ドゥハウ4

ロジカルシンキングのノウハウ・ドゥハウ
4569618820
HRインスティテュート 野口 吉昭
(PHP研究所 2001-11)

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【評価】いろんな種類のチャートの形を知ってみたいなら


【概要】
HRインスティテュート定番の装丁・体裁&内容の本。
本書の主張はは以下の3×3のポイントに尽きる。
  • 3つの思考法:「ゼロベース思考」「フレームワーク思考」「オプション思考」
  • 3つの基盤スキル:「コミットメント」「ストラクチャー」「コンセプト」
  • 3つのツール:「ロジックツリー」「マトリックス」「プロセス」
この9つを解説した後に、「戦略シナリオ」「ビジネスミーティング」「プレゼンテーション」での活用例を示す、という構成になっている。


【コメント】
本書は、ロジカルシンキングについて最初に知るための本ではない。各々のツールに関する説明も必ずしも丁寧でないし、登場する事例も経営用語(特にカタカナ語)についてある程度知識がなければ読みにくいと思う。

本書の中には、多種類のチャートが例示されている。それぞれのチャートは必ずしも中身まで書き込まれていないが、ロジカルシンキングのツールや表現方法を数多く仕入れたいのであれば、役に立つだろう。

私が本書に特に共感を持ったのは、ロジカルシンキングはそれを育む組織文化がもっとも重要だ、という主張である。ロジカルな人は、ロジカルな文化が育てるのだ。ロジカルに質問し、ロジカルに考える。この誰にでもできることが日常行動になって初めて、ロジカルシンキングが組織に定着する。何も特別なツール・手法によってロジカルシンキングは成り立っているのではない。
個人的にはこのことを認識できたことだけでも本書は価値があった。

2005年11月20日

【書評】企業診断 11月号4

【評価】
ファシリテーション技術がどんな場面で活用されているか分かる特集

【概要】
「企業診断」はコンサルティング専門誌で、特に中小企業診断士が主要な読者・執筆層の雑誌だ。やや大雑把に言えば、中小企業診断士向けの記事が半分、中小企業診断士試験受験生向けの記事が半分だ。
今回の11月号の特集は「活用自在!ファシリテーション入門」であり、30ページ以上の紙面が割かれている。

【コメント】
ビジネス系雑誌などでも最近特集が組まれることが多い「ファシリテーション」についての今回の企画は、面白い内容に仕上がっている。特に「ファシリテーター型リーダーシップ」の記事は、金科玉条のようなセオリーについて批判的に捉えており、逆にファシリテーションの奥深さを示すことに成功している。また「『双方向型』から『創発型』へ」という記事は、参加者同士の相互作用を重視するセミナーの企画・運営に非常に参考になる。
ファシリテーションの基本から応用までの現実的な可能性を提示した良い特集になっていると思う。

2005年11月05日

【書評】彼女を守る51の方法―都会で地震が起こった日4

彼女を守る51の方法―都会で地震が起こった日


【評価】「大切なあなたの恋人を救うための」という切り口がポイント

【概要】
12:03 M(マグニチュード)7.3 直下地震発生。

「ぼく」と「彼女」(モデル:石井めぐる)は休日の昼に、繁華街で都市直下型地震に襲われる。
こんな想定シチュエーションで、地震発生直後〜避難〜避難所生活という時間を追って、防災ノウハウを紹介する。実際の震災被害の写真・彼女(石井めぐる)の写真の両方を含め、多くの写真が用いられ、読むというよりも見るという体裁の本になっている。
終章では、被害の軽減・予防のためのノウハウについても触れられている。

【コメント】
真面目な防災ノウハウを「大切なあなたの恋人を救うための」という切り口で取り上げたことが本書の最大のポイントだろう。私が購入した動機は確かフリーマガジン『R25』で紹介されていたからだが、若年層への訴求に成功しているように思われる。大袈裟な言い方だが、このことによってこの本が果たした社会的意義も大きいと思う。これだけの基本知識が習得できるのであれば、モデルの石井めぐるに目が行って買うという動機も「アリ」だと思わせるほど、きちんとした一冊だ。
唯一惜しく思われるのは「51の方法」に付番がされておらず、まとまりに欠けて読みづらくなっている点だ。
カップル・夫婦で一冊買ってみていい本だと思う。続きを読む

2005年10月01日

【書評】自分の企画を本にしよう!―出版社に採用される「企画書&サンプル原稿」はこうつくる3

【評価】出版に取り組む意欲ある人が熱心に読むなら…

【概要】著者は「出版塾」を主宰し、企画・出版のサポートを行っており、このノウハウを集約したのが本書だ。この本は、「出版企画が採用されないのは内容ではなく企画書や原稿の書き方に問題があるからだ」という一貫した主張に基づいて書かれている。

主な内容は以下の3点だ。
  • 企画書の形式、企画書提出のルール
  • 企画のセールスポイントの6つのパターン
  • 企画書・サンプル原稿の実例(修正前⇒修正後)と典型的な悪い企画書・原稿のパターン
【コメント】
「企画書の形式・ルール・セールスポイント」については、初めて出版企画に取り組む人が読んで十分参考になる内容であると思う。この点は非常に評価できる。

「典型的な悪い企画書・原稿のパターン」については、かなり多くの分量の実例を載せているが、必ずしもポイントがつかみやすいとは言えず、かなり熱心に読まないと自分が企画する際の参考にならない。悪い実例でかなりの紙面を取っているので読むのに時間がかかるし、良い文章ならともかく悪い文章を読むことは苦痛を伴う。

カバーはそれなりにきれいだが、紙質と字の色使いは悪く、本体価格1400円の本としては貧相な感じがする。

出版に取り組もうという強い熱意をすでに持っている人が、「出版のポイントをつかみとろう!」という強い気持ちで読めば、十分役に立つ本だろう。

2005年09月27日

【書評】メル返待ちの女4

【評価】女性だけでなく男性にも読んでほしい

【感想】
この本は、著書と知り合う機会を得たので、人的な動機で購入した。
個人的には、普段この種の本を進んで買うことがないのだが、期待以上の内容だった。

本書は、男女で携帯メールに対する認識が違うということを指摘している。要約すると以下の通りだ。
  • 女性の場合、コミュニケーションの頻度は好き嫌いと比例する。連絡を取ること自体に「大切に思っている」という意味がある。
  • 男性の場合、コミュニケーションの頻度と愛情に比例関係はない。コミュニケーションは情報伝達の手段であり、連絡する必要のある情報がなければメールはしない。

その他のポイントも含め、一冊を通して実感を持ってうなずきながら読んだ。

男女の一般論として当たっているかどうかは別にして、通常のコミュニケーションを円滑にするための注意事項としても十分読み替えることができる。


イラスト・漫画が挿入されており、フォントや行間も読みやすさを重視している。文章部分が少なく「手抜き」と見る向きもあるだろうが、感情的なテーマについて書いているので私は違和感を持たなかった。また1200円という価格であるので、文句はない(2000円だったら考え直すかもしれないが)。

2005年08月27日

【書評】ひとつ上のプレゼン。3

ひとつ上のプレゼン。
4844320807
眞木 準
(インプレス 2005-03-03)
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【評価】広告業界のプレゼンに興味が深い人なら楽しめるか


【概要】
編者を含め19人のクリエイターの「プレゼン」論を集めた本。

ビジネスプレゼンテーションというよりは、広告業界特有の「プレゼン」に焦点が当たっている。「プレゼンテーション」自体がもともとは広告業界用語だということだが、本書には広告業界のマーケティング担当者のプレゼンさえもほとんど対象に含まれていない。

執筆者たちの肩書きはおおよそ以下の通り。
クリエイティブ・ディレクター、コピーライター、CMプランナー、アートディレクター、建築家、服飾デザイナー。

各執筆者の文章と実例をいい意味で寄せ集めて構成しただけの本だ。一応、プレゼンの「自分」、プレゼンの「相手」、プレゼンの「言語」、プレゼンの「関係」、プレゼンの「演出」と章立てはされているが、これも便宜的なものにすぎない。だから各クリエイターの生の考えがそのまま入ってくる。


【コメント】
場面が業界でのプレゼンに集中しているという点と、見解が集約されていない点を考慮すると、広告業界の人向けの本であると言ってよいと思う。

読者から見れば、当然執筆者間で見解が異なっている点があることが分かる(これは読者特権だ)が、この違いが何に起因するのか考えることも、業界に関わりの深い人であれば面白いだろう。

また以下のような点は、各執筆者にほとんど共通した見解だ。業界の人であればおそらく大きくうなずく主張なのだろう。
・パワーポイントは使わない
・企画書は1枚〜多くても数枚
・競合プレゼンには否定的


しかし一方で、ビジネスプレゼンテーションに活用できるかという観点では、共通点や使える点も勿論あるが、相違点の方が目についてしまった。パワーポイントを駆使したプレゼン、一定の厚みのある報告書、コンペで勝つプロポーザル(提案書)。こうしたものを期待するビジネスパーソンには本書は必ずしも適切でないと言わざるを得ない。

私が得られたビジネスプレゼンへの視点を参考に付記すると、例えば以下のような点だ。
・プレゼンは、一緒に仕事をする仲間を見つける場
・プレゼンの場では、「解決すべき問題の本質をわかっている」と感じさせる訴えかけが必要
・広告というのは、商品を売ることが目的。いい作品をつくりたいと思うのと、売れてほしいと思うのとでは違う
・相手を説得してはいけない。それよりも「共感」してもらったほうがいい


本書の中で、電通の中村禎氏が、2003年に阪神の星野監督(当時)の個人広告について言及している。優勝インタビューの第一声、「あ〜しんどかった」は広告として計画されたコピーだったということだ。星野氏の戦略性と広告コピーの力を感じさせるエピソードだ。

<参考>
さるさる日記−勝谷誠彦の××な日々。 2003年09月16日
タカの目(第146回) 2003年09月16日


それとどうでもいいことだが、書名の「モーニング娘。」「プロ論。」のような句点が、ちょっと気になる。

2005年08月23日

【書評】ファシリテーションの技術 「社員の意識」を変える協働促進マネジメント4

【評価】
図解を含め非常に読みやすいテキスト

【概要】
問題解決ファシリテーター」の著書が、企業改革活動にテーマを絞ってファシリテーションの基本的技術を解説したテキスト。解説されている技術の基本的な内容は前著を共通だが、ビジネスシーンに限定されているためビジネスパーソンにはより読みやすくなっている。また前著よりも表現が平易になっている印象を受ける。

本書ではファシリテーションについてp.43でフラン・リース著『ファシリテーター型リーダーの時代』(プレジデント社)を引用し、「中立的な立場で、チームのプロセスを管理し、チームワークを引き出しながら、そのチームの成果が最大となるように支援する」ことだと定義している。

ファシリテーションによる問題解決を、(1)プロセス・デザイン、(2)プロセス・マネジメント、(3)コンフリクト・マネジメントという3つのスキルに展開し、(a)ワークショップ技法、(b)グラフィック技法という大きく2つのツールを紹介している点は前著と共通だ。但し、p.47の図解「問題解決とファシリテーションのスキル」は分かりやすく進化している。

前著との大きな違いは、その後の解説本文の章立てで、以下の4つの視点で捉え直し、整理・解説している。
(1)チームのモチベーションを高める【共感を生み出す技術
(2)メンバーの意思疎通を支援する【意思を伝える技術
(3)議論を活性化させる【構造化の技術
(4)意見の対立を解消させる【コンフリクト解消の技術


【コメント】
前著との比較で言うと、本書が技術志向で、前著は手順に重点が置かれているという印象がある。どちらかを選ぶならば、テクニックに興味が深い人は本書、プロセス重視の人は前著を読むと良いだろう。

この本は、図解と地の文のレイアウトが優れており、非常に読みやすいつくりになっている。図解だけ見ていても勉強になるくらいだ。PHPビジネス選書らしい、読みやすく親しみやすい本に仕上がっている。図解が好きな人は本書、文章の方が頭に入りやすい人は前著が適すると思う。

私は、場面とツールが整理されたチャートが多く掲載されている点で本書を高く評価したい。ファシリテーション技術を頭の中で整理するのに役立った。

2005年08月22日

【書評】問題解決ファシリテーター―「ファシリテーション能力」養成講座 Best solution4

【評価】
ファシリテーションについての本格的解説書

【概要】
本書は「経営企画スタッフの大きな勘違い」という刺激的なパラグラフから始まる。多くの人が経営企画スタッフの仕事を、トップの影武者として組織を動かす参謀だと勘違いしているが、本来の姿は組織の潜在力を引き出し問題解決を促進することだというのが著者の主張である。

本書ではファシリテーションの定義を他書や著名人の発言に依っているが、やや乱暴に要約すると「自律分散協調型(ネットワーク型)組織での協働・創造と組織活力最大発揮のための技術」とでもなろう。


著者は、ファシリテーションを構成するスキルを、
(1)プロセス・デザイン:チームの力を問題解決に結集させる
(2)プロセス・マネジメント:コミュニケーションを組み立てる
(3)コンフリクト・マネジメント:対立を解消して創造性を引き出す
という3つに定義している。

そしてファシリテーションを支援するツールとして、
(1)ワークショップ:創造的な問題解決と学習を生み出す
(2)ファシリテーション・グラフィック:議論をビジュアルに整理する
の2つを紹介している。

よく構成された体系的な教科書になっている。


【コメント】
本書は同様のファシリテーション解説書の中では先駆け的存在であり、また良質な本格的テキストである。同じ著者の「ファシリテーションの技術(PHPビジネス選書)」や「ファシリテーション入門(日経文庫)」に比べて言い回しなどが硬いところがあるが、ビジネス書を読み慣れた人にはかえって読みやすい面もあると思う。

一部まちづくりでのファシリテーションについての記述も含まれているが、基本的にはビジネスにおける問題解決でのファシリテーションに焦点を当てている。

個人的には特にファシリテーション・グラフィックについてp.183〜185で基本から理想型までの例が示されていて、目指す姿を具体的にイメージすることができた。
また、他書の引用や参照が多くあるが、本書をきっかけに勉強を広げるのに役に立つと思う。

本書では、[エクササイズと解説]というスタイルが取り入れられているが、特段優れた問題演習という訳ではなく、地の文にQ&A形式での説明が含まれていると捉えた方が良いだろうことを添えておく。

2005年08月21日

【書評】中小企業診断士2次試験「80分間の真実」―合格者15名の再現答案とその思考プロセス4


【評価】
合格レベルを知り現実的な学習に向かうことができる

【概要】
本書は以下の4章で構成されている。
(1)データで探る合格者のコンピテンシー
(2)解答ランキング
(3)これが「合格」レベルの答案だ!
(4)筆記試験に合格したら

(1)データで探る合格者のコンピテンシーでは、サンプル数は平成16年度合格者の1割程度でアンケートを実施し、合格のための回答行動を分析している。合格者の特性が分かるだけでなく、不合格時との比較もあるので、自分の回答スタイルを分析し、見直すのに適している。

(2)解答ランキングでは、合格者が実際どのような回答をしたのかが、まとめられている。これを見ると合格者でも完璧な回答をできている人は少なく、ほとんどの合格者が正解できなかった問題さえあることが分かる。

(3)これが「合格」レベルの答案だ!が本書のメインコンテンツ。合格者15人の再現答案が、200ページ以上にわたって掲載されている。「模範解答」ではなく、現実的な目指すべきレベルを知ることができる。

(4)筆記試験に合格したらは、2次試験合格のモチベーション向上を意図したものだろう。口述試験・実務補修・合格後のことや執筆者たちからの応援メッセージが掲載されている。


【コメント】
本書は、恐らく今までなかったコンセプトの参考書だ。とにかく合格者の「実際の」回答を延々と載せてしまおうという発想は、単純かつ斬新だ。

模範解答は、理想的な回答として参考になるが、限られた回答時間の中で到達するにはどうしてもレベルが高すぎる。また、仲間内だけでの回答の見せ合いでは、合格レベルに達しているかどうかが分からず、十分な評価ができない。
これに対して、どのレベルに達すれば合格できるのかを知ることができれば、現実的な目標設定に役に立つだろう。本書はこのニーズに応えてくれる。

私は、短いが内容のある第1章と、メインコンテンツの第3章が特に役に立つ内容だと思った。


本書の使い方で留意事項を挙げるとしたら以下の2点だ。

(1)模範解答を別途用意すること
本書の中では、問題と再現答案は示されているが模範解答は示されていない。受験指導校からや書籍などで別途模範解答を用意しておかないと、道に迷ってしまう可能性がある。

(2)読み物として活用すること
本書は、何度も見たり解いたりして使う本ではない。解答ではないため、勉強にはならない回答もあるのだ。一気に15人分の回答を読むのも大変だ。息抜き代わりに読み物として活用することで、本書の効用を最大享受できるだろう。

2005年08月15日

【書評】おじいちゃん戦争のことを教えて―孫娘からの質問状5

おじいちゃん戦争のことを教えて―孫娘からの質問状
【評価】
日本の近現代史について考えるきっかけに

【概要】
アサヒビールの副社長を務めた著者が、アメリカで学んでいる娘からの質問に答える形で、太平洋戦争や戦後日本、天皇制などについての史観を記した一冊。
また本書の中では、この時代を生きた若者としての当時の心情も率直に語られている。
イギリスによる清への侵略行為やアメリカによるハワイ・カメハメハ王朝の併合など、帝国主義の時代背景を捉え、日本を戦争以外の選択肢しかない状況に意図的に追い込んでいくアメリカの行動を指摘する。また、焼夷弾や原子爆弾による非戦闘員への無差別攻撃やシベリア抑留や北方領土問題も明確に指摘し、事後法による東京裁判の醜悪にも言及している。

【コメント】
歴史の教科書ではないので、必ずしも体系的・網羅的ではないし、読者が自分で調べたり他書に当たらなければならない部分も多い。それでもこの本が魅力を持っているのは、娘への愛情のこもった語りかけと、現代の日本がともすれば失いがちな誇りを伴っていることによるだろう。
戦争という不幸な出来事を反省する気持ちと繰り返さない努力の大切さは誰もが持っているものだろう。そのためには、戦争の真の原因を把握し、対策を持つ姿勢が必要になる。ただ全面的に非を認めることで思考を停止しては過ちを繰り返すことになる。
偏った歴史観を見直すきっかけになる良書だ。

2005年08月10日

【書評】楽隊のうさぎ4

楽隊のうさぎ
【評価】
吹奏楽関係者であれば読んで面白い

【感想】
ブラスバンドを舞台にした、少年の成長小説。

ブラスバンド小説と思って、その題材だけが取り上げられている小説を望むのであれば、手に取らない方がいい。少年の成長物語を楽しむことができ、視点変わって母親の話などに着いて行くことのできる読者向けだろう。

「交響的譚詩」「くじゃく」「ラ・マルシェ」「ベルキス」といった(当時現役だった)吹奏楽部員にはおなじみの曲が、よく言葉でここまで表現したというくらいに鮮やかに描写されている。またコンクールに向けての練習ぶりなどは、多くの元吹奏楽部員たちには懐かしく感じられるだろう。

私はこうした素晴らしいディティールに面白さを感じた作品だった。
ただ、これらの曲になじみのない人が読んだ時には、もしかすると通じるところが少なく、音楽描写の部分は逆に無味乾燥に思えるかもしれない。

以上を踏まえると、小説がもともと好きで、吹奏楽や器楽の関係者という人には間違いなく薦めることができる一冊だ。


小説としては、主人公以外に視点を広げて書いていることで幅は広がっているが、その広げた部分のボリュームや深さがあまりないので、掘り下げの物足りなさを感じてしまう部分があった。


とにかく主人公に関する部分や音楽描写は素晴らしかった。
読後に気持ちが少し若くなったと思う。

2005年07月30日

【書評】PFI・PPP実践マニュアル―ここが知りたかった事業実施手順4

【評価】
PFIの公共側手順に関する中級書


【概要】
本書では、民間委託(業務委託・公設民営)、デザインビルド方式、第三セクターとPFIを、PPP(官民共同事業)の対象領域として取り上げている。PPPの概説と民間側の手順・留意点も記されているが、本書の主テーマは公共側を中心としたPFIの手順と留意点である。

公共側の手順は大きく以下の7つに分けて合計46のポイントについて解説されている。
(1)事業化の是非の検討
(2)事業化の可能性調査
(3)事業実施方針の策定・公表
(4)事業化の決定と公表
(5)入札説明書の策定・公表
(6)事業者の公募・審査・契約
(7)事業の実施とモニタリング
また巻末には事例編としてDB(デザインビルド方式)、PFI、第三セクターの3つの事例が紹介されている。


【コメント】
公共側46の手順、民間側8の手順に分けて一問一答に近い形で構成されているのが本書の特徴。一つひとつのポイントについて理解しながら読み進めることができる点は評価できる。

本の性格としては、PFIに関する入門書ではない。PFIについて既に一定の関心を持っている人が、PFI・PPPについて理解を深め、次のステップに進むまでの繋ぎのための本だろう。

実務者向けには、本格的に取り組むまでの軽いウォーミングアップとして位置付けられるだろう。文中では、様々な手法や手段の得失などが整理されている表が多用されており、理解を深めるのに役に立つ。一方で、詳細な契約条項等が記されている訳ではないので、完全な実務用マニュアルとしては使えない。

大学生など学習者は、本書で概念的な説明だけでなく実務的な側面を知ることができる。かつあまり細部に入り込んでいないので読みやすいと思う。また文中の図表などはレポートの作成にも役立つだろう。但し、完全な初学者が一番初めに読む本としては面白味に欠けるかもしれない。

巻末に事例編として3つの事例が紹介されている。この内、PFIの事例は、2本のPFI事業を同時並行させたことが特徴的な、「市川市立第七中学校校舎建設等事業」である。この事例には23ページの紙幅を割いている。
これらの事例紹介が、かなり詳細に記されているのがよい。


【参考情報】
日本政策投資銀行ニュースリリース(平成15年7月8日)
市川市の中学校PFI事業をプロジェクトファイナンス方式で千葉銀行とともに共同アレンジ

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